basara

基本慶次受ばっか。

政宗×

幸村×

佐助×

その他
大河風林火山の勘助とその仲間達のお話です。
..... 勘助と、その仲間たち



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*** 幼子 ***


子ども特有の高い声に誘われて枝を飛んでいくと、辿り着いた先は意外と深い森の奥で。
見付けた、と口の中で呟いて、目的の木の、足場のしっかりとした枝に足を衝けた。
見上げれば、蹲ったまま動かない小さな固まりがそこに。
よく見ればそれは小刻みに震えていて、時折か細く誰かの名を呼び啜り泣く声が聞こえる。
微かに聞こえる名に、思わず緩む口元を引き締め、腰に手を当てやれやれと溜息を吐いた。

「何を、やってるかな」

その瞬間、蹲ったままの身体が、ばっと顔を覗かせた。
そして。

「しゃーにぃ!!」

何を思ったか(恐らくは何も考えてないのだろう)幹にしがみついていた腕を離し、勢いよく立ち上がった。

「ばっ!!」

ぐらり、と傾くからだ。
安定を保ちきれず、ずるりと枝を離れる足。

「こん・・・っの!!」

考えるよりも、身体が動いていた。
枝の反動を利用して高く飛び、幹を使って二度三度更に高く飛ぶ。
腕を伸ばし、勢いを付けながら落ちてくる小さな身体を間違うことなく受け止め、そのまま枝を蹴り更に高く飛び上がった。
ぎゅうっとしがみ付いてくる腕に、こちらも抱きしめる腕に力を込め、子ども二人分にはちょうど良さそうな幹に目を付け、すとん、と音もなく降り立つ。
そして丸まったまま離れない背中をとんとんと叩けば、小さな腕が少しずつ離れていく。

「しゃあ・・・に?」

「ったく、何回言えば分かるのかなこのかわいい頭は」

握り拳をぐりぐりと頭に乗せ二回目の溜息が口から漏れる。

「しゃーにぃ!」

「じゃないよ。下りれないなら上らない。何度も言わせない。あと、急に下を見ない。どうせまた怖くなって目眩起こしたんだろ?」
「う?」
「あー、ごめんごめん。意味分かんないよな」
拳を何度も擦り付けたせいでぐしゃぐしゃになってしまった髪の毛を優しく手の平でなじませながら、それならとその手を赤く染まる頬に持っていく。
そして如何にも子どもらしい柔らかい頬を軽く抓ね上げ、だったらと呟いた。
「これだけは覚えておこうな。いいか、自分で降りられない木には登らない。さっきみたいに落ちたらどうするんだ」
「しゃーにぃがきてくれた!」
「・・・今回はたまたまだろ。俺がいないときはどうするつもりだったんだよ」
「しゃーにぃが来てくれるからだいじょうぶだも!」
「だから・・・」
信じて疑わない真剣な眼差しにやれやれと苦笑し、その頭をぽんぽんと、優しく撫でた。
「だったら、お前ずっと俺が側にいないとだめじゃないか」
「しゃーに、ずっといっしょ?」
「そうだなー・・・取り敢えずは落ちなくても大丈夫なくらい立派な忍者にならないと、一人で歩けないかもなー」
「いいも!にんじゃならないも!!しゃーにぃとずっといっしょにいるもー!!」
「じゃあ明日からの稽古はもういらないな?」
「やー!!しゃーにぃとあそぶー!!」
ぽすりと飛び込んでくる身体を落ちないように受け止め、ひしりとしがみ付いて離さない背中を、とんとんと軽く叩いた。
「あのなぁ、遊びじゃなくて忍者になるための立派な修行」
「やー!!しゃーにぃといっしょがいいー!!」
「・・・・・・はいはい」
もう何を言っても無駄か。
本日何度目やらの溜息を漏らし、胸に埋まる頭を無理矢理上に向かせた。
「だったら、明日からの遊び、ちゃんと頑張ろうな?」
「うん。がんばる!けい、えらい?」
「そうだなー。お前はやればできる子だからな。ちゃんと頑張れたら、ご褒美あげようかな」
「ほんと!?」
「ほんとほんと。だから、頑張ろうな?




慶次 」







ぱちり、と前触れもなく目が覚めた。 いくら陽気な天気とはいえ、真田隊を纏める長であるはずの自分が木に背中を預けたまま居眠りをするとは。
くあ、と小さく欠伸を噛み締め、眠りを妨げた原因に目をやる。
春の陽気に似合わないくらい暑苦しい炎をまとった自分の主と。
そして、春、を模しているかのような、その人物を。
楽しそうに大刀を振るうその姿に、先ほどの夢の中で見た笑顔が重なり、佐助は思わず苦笑を漏らした。

「本当に、いつまで経っても変わらない、か」

自分を一番だと嬉しそうに笑んだ、それだけは。